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細胞増殖の過程1) 2)
- 細胞の増殖は、(1)細胞外からの増殖シグナルである増殖活性因子が細胞膜の受容体に結合することから始まる。(2)その受容体のチロシンのリン酸化活性が高まり、そこから細胞内のリン酸化カスケードを発動し、シグナル伝達に関係する蛋白質がつぎつぎにリン酸化していく。(3)リン酸化カスケードの次に Rasが活性化される。(4)続いて、MAPKカスケードが働き、最終的にシグナルが核内へと伝達され、転写因子が活性化される。これが増殖因子受容体からの細胞内シグナル伝達である。(細胞内でのシグナル伝達は『4. 細胞内増殖シグナル伝達』の項でご紹介します。)
癌細胞の増殖1) 2)
- 癌細胞ではこの増殖シグナル伝達経路の過程において、蛋白質の変異により増殖シグナルが常時活性化状態になる。その結果、細胞増殖の抑制が利かず無制限に増殖が始まる。
- また異常増殖が起こるだけでなく、アポトーシスが起こりにくくなる。
- 癌細胞は無制限に増殖するとともに、運動能を亢進させ、原発巣から離脱し、浸潤・転移して悪化していく。
癌細胞の離脱3)
- 癌の浸潤は、原発巣からの離脱により始まる。この過程では、癌細胞同士の結合に関わる接着分子の機能低下(細胞間接着が減弱し、細胞極性形成が破綻する)が深く関与している。
接着分子の機能低下 3)
- 上皮細胞は、Eカドヘリンにより細胞同士が結び合わさっている。Eカドヘリンは細胞内ではβカテニンやαカテニンにより細胞骨格と結びつけられて支えられている。高浸潤性の癌ではEカドヘリンが低下し、原発巣から癌細胞が離脱しやすいと考えられている。
分離/基底膜からの離脱 3)
- 細胞や組織の間隙に存在する細胞外基質は癌細胞の浸潤の障害になる。したがって、癌細胞が浸潤・転移を完結させるためには細胞外基質を分解して組織に侵襲していくことは重要な過程となる。
- 癌細胞はMMP(Matrix Metalloproiteinase)を分泌し、基底膜を破り基底膜から離脱する。
- MMPは主としてコラーゲンをはじめとする細胞周辺の細胞外基質の分解に関与する蛋白質分解酵素で、癌組織で過剰発現していることが多く、癌細胞の浸潤・転移に深く関与する。複数のMMP(MMPファミリー)の共同作業により、細胞外基質の蛋白質を分解する。
- 基底膜に特異的に存在するⅣ型コラーゲンを分解するのは、主としてMMP-2とMMP-9である。
浸潤/間質組織の分解と血管内浸潤 3)
- 基底膜を通り抜けた癌細胞は、MMP-1を分泌して細胞外マトリクスを破壊し、血管(あるいはリンパ管)に到達すると血管の基底膜を破壊して血管内に侵入する。
- 間質のコラーゲンは主として繊維状の構造を持つⅠ、Ⅱ、Ⅲ型コラーゲンである。
血管内の移動と着床 4)
- 血管内に入り込んだ癌細胞は、その表面にCD44を発現し、血管内皮細胞のヒアルロン酸と弱い接合と解離を繰り返しながらローリングを行う。
- やがて癌細胞は細胞表面の糖鎖抗原を血管内皮細胞のEセレクチンに結合し、血管内皮細胞に接着、その間隔を広げ、血管外へ浸潤する。
- 転移に成功した癌細胞は、VEGFを分泌して栄養を送り込む血管を新たに作り出し、増殖してゆく。
癌における血管新生とは 3)
- 血管新生とは微小血管の血管内皮細胞が刺激に反応して、新しい血管ネットワークを形成することである。
- 癌が増殖するには大量の栄養を必要とするため、癌細胞は血管新生の増殖因子を作り、癌組織内に血管を張り巡らす。
- 癌における血管新生は悪性腫瘍の増大と転移に必須である。
血管新生の過程 3)
- 多くの癌細胞は血管内皮細胞の増殖を促し、新生血管の増生を促進する血管内皮増殖因子(VEGF)を産生する。 VEGFは微小血管(毛細血管)の血管内皮細胞に働きかけて、遊走と増殖を促す。
- VEGFは、血管周囲の細胞と内皮細胞との接着力を減弱させ、かつ増殖因子の働きもあり、血管内皮細胞が分裂を始める。
- 血管内皮細胞は互いに接着を保ちつつ、内部に管腔をつくりながら伸長していく。
- 癌細胞まで到達した微小血管は、癌組織の中に網目状のネットワークを形成し、癌に酸素や栄養を供給する。 腫瘍内の血管密度、微小血管密度が高いほど、つまりネットワークが高精度であるほど、腫瘍の予後が悪いといわれている。
参考資料
- 1)わかる実験医学シリーズ~シグナル伝達がわかる(秋山 徹 編集/羊土社/ 2006)
- 2)分子生物学講義中継Part2 細胞の増殖とシグナル伝達の細胞生物学を学ぼう(井出利憲 著/羊土社/ 2004)
- 3)がん研究のいま~(2)がん細胞の生物学(高井義美・秋山徹 編集/東京大学出版会/ 2006)
- 4)新臨床腫瘍学~がん薬物療法専門医のために(日本臨床腫瘍学会 編集/南江堂/ 2007)
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