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癌細胞の増殖は増殖因子受容体から始まる 1)
- 近年、分子レベルで構造と機能の解析がなされてきた結果、細胞性癌遺伝子、癌関連遺伝子がコードする蛋白質の多くが、細胞内シグナル伝達系で機能していることが明らかになっている。癌関連遺伝子の産物とは、増殖因子、増殖因子受容体、細胞内シグナル伝達因子、核内転写因子などである。
- 細胞膜表面に存在する増殖因子受容体はいくつかあり、増殖因子が結合することで増殖シグナルの伝達が始まる。(図参照)
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増殖因子受容体からはじまるシグナル伝達 4) 5) <イメージ映像> - ※各増殖因子受容体にロールオーバーすると名称と働きが表示されます。
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- 上皮にできた悪性腫瘍は上皮増殖因子(EGF)によって増殖の刺激が与えられる。癌細胞はEGFの産生を高め、上皮増殖因子受容体(ErbB1/EGFR)に作用させて増殖を刺激する。EGFが結合したErbB1受容体は細胞増殖シグナル伝達系のリン酸化で活性化し増殖をはじめる。癌細胞では増殖シグナル伝達経路の蛋白質変異により、増殖シグナルが常時活性化されている。また増殖シグナルを抑制するシグナル伝達系が異常をきたすと癌化は促進される。
乳癌におけるErbB2の過剰発現 2)
- ErbB2(HER2/neu)遺伝子は遺伝子増幅により乳癌の約20%程度で過剰発現していることはよく知られている。また、遺伝子増幅を伴わず転写亢進によってErbB2蛋白の過剰発現している例も少なからず認められている。
- ErbB2蛋白が過剰発現する乳癌患者では、他の乳癌患者に比べ有意に予後が不良である。
受容体型チロシンキナーゼErbB2 とは 2)
- ErbB2受容体はErbB1受容体に類似する受容体型チロシンキナーゼである。
- ErbB2受容体は独自のリガンドはないが、ErbB2受容体同士(ホモ)あるいは他のErbB受容体(ヘテロ)と2量体/ダイマーを形成し、細胞増殖促進活性を示す。 特にヘテロ2量体の形成ではホモ2量体に比べ強いチロシンキナーゼ活性を示す。
- ErbB2は乳癌、卵巣癌をはじめとする多くの癌で過剰発現が報告されている。そのErbB2を標的とする分子標的薬が開発されており、ErbB2を過剰発現する乳癌に効果的であることが示されている。
シグナル伝達経路同士の相互作用 3)
- 1つの受容体から発生するシグナルが、カスケード反応として複数の伝達経路を生み出していく。1つの細胞は数十あるいはそれ以上の種類の受容体をもっており、しかも複数の増殖因子が細胞を刺激している。
- 複数の受容体が刺激を受け、複数のカスケード系が動いていることから、カスケードは互いに完全に独立であることは少なく、一部の分子を共有していたり、相互に影響しあう。このようなシグナル伝達経路同士の相互作用を“クロストーク”という。
参考資料
- 1)がん研究のいま~(2)がん細胞の生物学(高井義美・秋山徹 編集/東京大学出版会/ 2006)
- 2)わかる実験医学シリーズ~癌のシグナル伝達がわかる(山本雅・仙波憲太郎 編集/羊土社/ 2005)
- 3)分子生物学講義中継Part2 細胞の増殖とシグナル伝達の細胞生物学を学ぼう(井出利憲 著/羊土社/ 2004)
- 4)癌治療の新たな試み~新編Ⅲ(西條長宏 編集/医薬ジャーナル社/ 2005)
- 5)サイトカイン・増殖因子用語ライブラリー(菅村和夫・宮園浩平・宮澤恵二・田中伸幸 編集/羊土社/ 2005)
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